札幌の冬を代表する「さっぽろ雪まつり」、大雪像制作の舞台裏。

札幌の冬の風物詩「さっぽろ雪まつり」、大雪像制作の舞台裏

札幌の冬のイベントと言えば、さっぽろ雪まつり!会場の1つである大通公園には、大小さまざまな雪氷像が並びます。毎年多くの人気を集める高さ12〜15mもの大雪像は、前年の秋から準備が始まり、1月になると現場での制作がスタートします。実は札幌市民も意外と知らない、大雪像制作の舞台裏。今回はさっぽろ雪まつり大雪像制作委員会の削り出しによる制作過程と、自衛隊のアイスブロック工法による制作過程をご紹介します!


模型・設計図製作

雪が降る前から、人知れず札幌市役所の地下で制作チームが活動。

毎年秋になると、3チームからなる「さっぽろ雪まつり大雪像制作委員会」の各制作部会の隊長たちが、札幌市役所地下に集結。雪で実現可能な造形や実際の作業工程などを検討しながら、模型・設計図を作ります。

10月

大通公園の各会場責任者から大雪像案が提出。大雪像制作歴40年というベテラン隊長が、雪で実現可能な造形となるよう原案を調整していきます。

11月

  • 第2週~12月第1週
    模型(40分の1のスケール)用の設計図を作り、模型制作がスタート。その後、大雪像用の設計図作りに着手します

12月

  • 第1週~第2週
    各チームで、大雪像制作の工程を具体的にシミュレーション。高所作業となる制作現場に必須な足場をどう組んで、どの順番で作り込んでいくのか、何度も話し合います。
  • 第2週
    さっぽろ雪まつり実行委員会のプレス発表。
  • 26日~29日
    足場を立て、雪積み作業の準備が終了。あとは年明けを待つのみ!

削り出しによる大雪像制作

削る、練る、貼る。大雪像制作の現場は体力勝負。

削り出しによる大雪像制作を手がけるのは「さっぽろ雪まつり大雪像制作委員会」。2019年は西5丁目、西8丁目、西10丁目の大雪像を制作します。高所での作業になるので、ヘルメットと安全帯は必須アイテム。では、制作現場をのぞいてみましょう!※写真は2017年の西5丁目「トット商店街」の制作現場です。

雪をひたすら踏み固める!土台作り

1月7日から約1週間かけて、真駒内滝野霊園や里塚霊園から運び込んだ雪を積んで踏み固め、土台作りをします。土台に使う雪の量は、5tトラック200〜300台分!空気を含んだフワフワの雪が、何度も踏み固められることで氷に近い硬度になり、しっかりとした固い土台が出来上がります。

荒削り

外を囲っていたパネルを外し、荒削りスタート。設計図を元に、チェンソーで切れ目を入れてから、先端をギザギザにカットした特製スコップで削っていきます。巨大な四角い雪の塊から大雪像の原型が削り出されるまで、2〜3mほど奥行きを削る必要があるため、足場を随時組み替えながら掘り進めます。

雪練り&化粧雪の貼り付け

中山峠から運んだきれいな雪に水を加え、練ってシャーベット状にした雪は「化粧雪」と呼ばれます。雪練りは重労働なので、10人で交代しながら作業します。雪像の各箇所に届けられた化粧雪は、メイクを施すように雪像に塗り込められます。その後、ノミやケレン棒で表面を削って成形したり、細部に彫刻を施したります。

完成!

完成に近づいた雪像も、気温が上がると雪のコンディションが変わるため、補修作業は欠かせません。雨が降った場合は作り直します。制作期間〜さっぽろ雪まつり期間中は、氷点下の晴天となるよう祈ってくださいね!

アイスブロック工法

1日に最大120人を動員できる自衛隊ならではの手法!

さっぽろ雪まつりの第6回(1955年)から雪像制作に協力している「陸上自衛隊第二雪像制作隊」。日本の伝統的建造物を大雪像で再現する際は、「アイスブロック工法」という独自の手法で制作します。※写真は2017年の「奈良・興福寺 中金堂」の制作現場です。

雪を踏み固めてアイスブロックの原型を作成

中山峠から運んだきれいな雪を踏み固め、アイスブロックの原型を作成します。2017年の「奈良・興福寺 中金堂」では、10tトラック300台分の雪を使用し、幅170cm、長さ20mのアイスブロック原型を3本作成しました。

アイスブロックの作成

原型から適宜のサイズに切り分け、削り出しによる細工を施します。小さい部品を大量に製作する際は、型枠に雪を入れ固め、抜き出して製作します。ブロックの一つひとつをチェックして、ゴミが紛れているものは除去。最後に素手で磨くことで、大理石のような滑らかな仕上がりに。雪を素手で何十個も磨くため、カイロとハンドクリームが必須アイテムです。「奈良・興福寺 中金堂」で使用したアイスブロックの総数は、60種類計4500個!

アイスブロックの貼り付け

化粧雪と水を混ぜ合わせた「ネタ雪」で、アイスブロックを雪像本体に接着。ブロックを組み合わせて制作していくことで、立体感が生まれます。気温が上昇するとブロックの取り付けが困難になるため、夜間に作業時間を変更することも。

完成!

幅22m、高さ約13mもの大きさはもちろん、2層の大屋根や鬼瓦など、名建築の細かなあしらいを表現した仕上がりは圧巻。2019年もお楽しみに!