新しい札幌観光「鴨々川ノスタルジア」 鴨々川ノスタルジア実行委員長 石川圭子さん

「すすきの」と聞いて思い浮かぶイメージは賑やかな歓楽街?実はすすきのには、6つのお寺を抱える「寺町」としての一面も。2014年からスタートした「鴨々川ノスタルジア」は、お寺や中島公園の日本庭園を舞台に日本文化を紹介するイベント。実行委員長で、すすきのの元芸者置屋を改修した「古民家gallery鴨々堂」オーナーでもある石川圭子さんに、鴨々川ノスタルジアの魅力や、寺町すすきのから見えてくる札幌の歴史・文化について話を伺った。


すすきののお寺と中島公園の日本庭園で開催されるイベント「鴨々川ノスタルジア」

鴨々川ノスタルジア」は、中島公園からすすきのにかけて流れる鴨々川流域のお寺、ギャラリー、ホテルなどが手を組み、2014年にスタートしたイベント。「寺町すすきのを遊ぶ」をキーワードに、3日間にわたって茶道や和紙梳きなどの体験型講座、アイヌ音楽などの演奏会、昔ながらの手仕事や芸能を紹介する「なりわい村」を開催する。

「会場は、札幌唯一の骨仏と平安時代の木像を持つ新善光寺、札幌に開拓使が置かれるのとほぼ同時に開教した東本願寺、中島公園の日本庭園の三カ所です。着物で会場を巡る企画も人気があります。着物のレンタルと着付けもしているので、多くの方に着物で散策してほしいですね。外国からの観光客も、日本の文化や札幌の歴史を楽しんでもらえたらと思います」。

札幌の歴史や文化を掘り起こす本「Bocket」を、イベントに合わせて発行

鴨々川ノスタルジアでは、イベント開催に合わせて「Bocket(ボケット)」という公式ガイドブックも発行。第1号は、中島公園の歴史やすすきののお寺に焦点を当てた特集で、札幌市民の話題を呼んだ。

「Bocketは、鴨々川周辺に暮らす人々へのインタビューなどを通じて、地域史を発見していくことを目指しています。もともと私が鴨々川周辺の歴史に興味を持ったのは、10年ほど前に北海道立三岸好太郎美術館で作品解説のボランティアをしたことがきっかけです。すすきの市場の南にある豊川稲荷札幌別院(南7条西4丁目)の辺りが三岸の生誕の地だと知って詳しく調べていくうちに、約100年前のすすきのにはお座敷を持つ料亭がたくさんあり、花柳界が隆盛を誇ったこと、お寺を中心とした人々の生活がすすきのにあったことなどを知りました。札幌は開拓使によって人工的につくられた都市で歴史が浅いと言われますが、そこに暮らす人たちの口述史に触れることで、歴史の厚みを感じることができます。今後も、埋もれていた歴史や文化をどんどん掘り起こしていきたいです」。

中島公園とすすきのの名所を巡る、ガイドツアーがスタート

2015年9月からは、「イベント期間中だけでなく、通年で鴨々川周辺を楽しんでほしい」と考え、中島公園やすすきののお寺を巡るガイドツアーがスタートした。札幌パークホテルに事前に申し込めば、500円で誰でも参加できる。

「観光で来た方には、このツアーで歓楽街とは違うすすきのを楽しんでほしいですね。札幌市民にもすすきのにこんなにお寺があることはあまり知られていないので、ツアーに参加してくれた方からはちょっとした旅行気分を味わえると好評です。冬のコースには、写経や座禅のワークショップを組み込んでみようかなとも考えています。このガイドツアーや鴨々川ノスタルジアが、札幌の歴史や伝統文化に気軽に触れられる場として、札幌観光の新たな楽しみになっていけばうれしいです」。

石川圭子(いしかわ けいこ)

鴨々川ノスタルジア実行委員長・古民家gallery鴨々堂オーナ

1971年札幌市生まれ・建築工学科卒。2013年11月より、薄野の一角にある元芸者置屋を改修し、古民家Gallery鴨々堂を運営。また、古民家の保存活動や、札幌史の聞き書きなどを行っている。

鴨々川ノスタルジア http://kamokamogawa-nostalgia.net/